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神経系−免疫系を介した腎臓保護メカニズムの解明
私達はこれまでに、急性腎障害(両側腎虚血再灌流障害)モデルを用いて、迷走神経の電気刺激によって、1) 急性腎障害から腎臓が保護されること、2) 保護作用の発揮にはα7 ニコチン性アセチルコリン受容体(α7nAChR;α7 nicotinic acetylcholine receptor)陽性の脾細胞が重要であること、3) 迷走神経刺激によって腎臓に浸潤したマクロファージの形質がα7nAChR依存的に変化すること(Inoue*, Abe* et al. *Equally contributed. . J Clin Invest. 2016)、4) Hes1遺伝子がマクロファージにおいてα7nAChRを介して誘導され、抗炎症効果を発揮すること(Inoue et al. Kidney Int. 2019)などを見出してきました。さらに、延髄C1ニューロンをオプトジェネティクス法にて特異的に刺激することでも、同経路を介した腎保護作用がみられ、この経路にはβ2アドレナリン受容体(β2AR;β2 adrenergic receptor)を持つCD4陽性T細胞が重要であること(Abe*, Inoue* et al. *Equally contributed. Nat Neurosci. 2017)を発見するなど、本研究分野で世界をリードする研究を行っています。
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腎臓組織での蛍光染色
1細胞レベルでの遺伝子発現網羅的解析(シングルセルRNA-seq)などの最先端の技術を駆使して、腎臓において未だに明らかとなっていない細胞群の機能の解明を行なっています。
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単球接着アッセイ
動脈硬化発症には単球の血管内皮への接着が重要な役割を果たします。私達は神経刺激によって調節される、動脈硬化進展に関わる新規メカニズムの解明を目指しています。
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迷走神経刺激の治療的効果
シスプラチンによる腎障害において、腎臓が障害を受けた後でも迷走神経刺激を行うことで障害が軽減すること、その効果発揮にはマクロファージの遊走に関わるCCL2などの因子が重要であることを見出しました(Sci Rep 2020)。
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神経系−免疫系の関連
神経系−免疫系の関連は、nature neuroscienceとnature immunologyの合同記事で特集(2017)されるなど、新たに注目をされている分野です。神経系−免疫系を中心とした臓器連関に注目し、新たな臓器保護メカニズムの解明を目指します。